近年、電子書籍の市場は急速に成長しています。中でも、特にAmazonのKindle出版を使えば、出版社だけでなく、個人でも、自分の書いた本を簡単に世界中の人たちに届けることができます。Kindle出版を副業の一つに考えている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、日本語・英語で電子書籍を出版をしてきた私の経験も踏まえ、出版のプロセスから確定申告の知識まで、知っておくべきことをわかりやすく解説していきます。
Kindle出版にチャレンジしたい方や、もう始めていて収入を増やしたい方はぜひ参考にしてみてください。
電子書籍・Kindle出版とは
電子書籍出版とは、あなたの書いた本を、紙の本ではなく、デジタルの形でみんなに読んでもらうことです。
昔は本といえば紙の本一択でしたが、今はスマホやタブレットなどで読める時代。国内でも海外でも、電子書籍市場は拡大し続けています(ただし、日本の場合はコミックが大多数を占める)。
また、以前は本の出版といえば、商業出版、つまり出版社を通しての出版しかありませんでしたが、電子書籍の登場により、自費出版が簡単な時代になっています。
出版先にKindleを選ぶ理由
電子書籍サービスには国内外、様々なものがあります。
中でも、電子書籍の世界的な市場の多くを占めているのがAmazonです。2023年1月のこちらのデータによると、Amazonの世界シェアは少なくとも67%を占め、Kindle Unlimitedを含めると83%にもなるそうです。
日本国内でもKindleストアは、多くの人が利用している電子書籍サービスの上位にランクインしています。
市場規模が大きいということは、それだけ潜在的な読者が多いということです。
Kindle出版のメリット
Kindle出版の主なメリットは次のとおりです。
- 低コストで出版できる
- 顔出し不要で匿名でできる
- 国内外の読者にアクセスできる
- ロイヤリティ(印税収入)が高め
- 出版プロセスが早め
- 更新が簡単
低コストで出版できる
物理的な本を印刷・配布する費用がかからず、基本的に無料で出版できます。
顔出し不要で匿名でできる
副業やプチビジネスに興味はあっても、顔出しはしたくない、本名は晒したくない、と考えている人も多いでしょう。
Kindleを含めた電子書籍出版では、顔出しの必要はありませんし、ペンネームを使うこともできます。副収入を稼げたとしても、逆に、失敗したとしても、誰にもバレないという点もメリットの一つでしょう。
国内外の読者にアクセスできる
Amazonの巨大なプラットフォームを通じて、世界中の読者にあなたの本を届けることができます。
ロイヤリティ(印税収入)が高め
書籍が売れれば最大で売上の70%が印税収入となり、毎月口座に振り込まれます。物理的な本に比べても、高めの印税を受け取ることができます。
出版プロセスが早め
物理的な本の出版には数ヶ月、あるいは年単位で時間がかかりますが、電子書籍の場合には、早い場合にはアップロード後、数時間から数日で本の販売が開始されます。
そのため、今話題のトピックについても、タイムラグなく出版することが可能になります。
更新が簡単
本の出版後、修正や更新が必要な場合には、簡単に修正版をアップロードすることができます。物理的な本の場合にはこうはいきません。
また、何らかの事情で本の販売を中止したくなった場合には、クリック一つで販売を停止することも可能です。
Kindle出版のデメリット
一方、Kindle出版には抑えておきたいデメリットもあります。
- 売れない・収入に繋がらない可能性もある
- 本の品質管理は自己責任
- 技術的な難しさがある
売れない・収入に繋がらない可能性もある
Amazon/Kindleは読者も多いですが、本の数も膨大です。
そのため、自分で積極的なマーケティングを行わないと、本が売れなかったり、収入に繋がらない可能性があります。
本の品質管理は自己責任
出版社を通して出版する場合には、出版社がやってくれる作業、編集や校正、表紙など、出版する本の品質をすべて自分で管理する必要があります。
ただし、自分で全部背負い込む必要はなく、ココナラなどのサイトで作業を委託することもできます。
技術的な難しさがある
電子書籍のフォーマットに合わせた本の原稿の準備や、KDPプラットフォームの使用にはある程度の技術的な知識が必要です。
ただ、ChatGPT等を使うことで原稿の準備を楽に行うことができるほか、ココナラなどのサイトで誰かに手伝ってもらうこともできます。また、KDPサイトの使い方はこの記事でもご紹介していますので、ぜひ活用してください。
本の制作・出版前の準備
Kindle出版のステップ
- 目的を明確化する
- 本の原稿を準備する
- 本の表紙を作る
- KDPに本をアップロードする
- 宣伝する
目的を明確化する
何事も、始める前に全体像を把握すること、何のための作業なのか確認することが大切です。(←ポケビジ 河本校長の教えの一つ)
電子書籍の出版の前にも、自分がなぜ本を出したいのか、しっかり考えてみることをおすすめします。
例えば以下のような目的が考えられます。
- 収入を得たい
- 自分の知識や経験を共有したい
- 自分の人生を本にまとめたい
- 本をきっかけとして自分のサービスや商品の購入につなげたい
- 本の著者になりたい
なぜ目的を明確化させるのが大事かというと、目的によって、本に含めるべき内容や本の価格設定が変わってくる場合があるためです。
例えば、本をきっかけとして、読者に自分の商品やサービスにつなげたいと考えているのであれば、内容は自分の商品やサービスに関連するものが望ましいでしょう。
また、本に関連するウェブサイトの情報を載せる必要もありますし、本の価格はなるべく安くして、多くの人に手に取ってもらえるようにしたいと考えるかもしれません。
一方、自分の人生を一冊の本にまとめることが一番の目的であれば、収益を追い求める必要はないかもしれません。
本の執筆は(AIなどで即席で作るのではなく)きちんとやろうとすると、時間がかかる作業です。執筆している間に、方向性が曖昧になってしまうこともよくありますので、自分の当初の目的を忘れないようにメモしておくのもおすすめです。
本を準備する
本の原稿を準備するにあたり、注意したいのが「ファイルの保存形式」です。
電子書籍出版のプラットフォームによって、アップロードできる原稿の形式が異なります。
Amazon/Kindleで奨励されている形式は以下のものです。
- Microsoft Word (DOC/DOCX)
- Kindle Package Format (KPF)
- EPUB
- MOBI
このうちどれかを選ぶと良いと思いますが、以下の形式も使用できると書かれています。詳しくはKDPのこちらのページを参照してください。
- HTML (ZIP、HTM、または HTML)
- リッチ テキスト フォーマット (RTF)
- プレーン テキスト (TXT)
本の原稿を書き終えたら、誤字脱字をチェックしたり、本の見え方を確認したりします。
作成した本がどのように実際に見えるのかは、「Kindle Previewer」という無料のソフトで確認することができます(要ダウンロード)。
Kindle Previewerを通して本を読むと、原稿をただ見ているだけでは気づけなかった点に気づくこともできます。自分で編集・校正を行う場合には特に、アップロード前に一度このソフトを使ってチェックすることをおすすめします。
本の表紙を作る
本の表紙は、タイトルとともに、読者の目を引く大事なポイントです。
本の表紙はCanvaなどを使って自分でも作れますし、ココナラなどのサイトで依頼することもできます。
表紙画像のサイズは、高さ 2,560 ピクセル、幅 1,600 ピクセルが奨励されています。
Kindle本の表紙が満たすべき条件について、詳しくはKDPのページをご確認ください。
KDPに本をアップロードする
記事の後の方で具体的な方法をご紹介します。
宣伝する
出版後、必要に応じてAmazon A+コンテンツを作成したり、SNS等でプロモーションを行ったりします。
「A+(エープラス)コンテンツ(商品販売コンテンツ)」とは、Amazonの商品詳細ページに画像やテキストなどの情報を追加するものです。
A+コンテンツを作成した場合、Amazonで本を見たときにはコンテンツが表示されますが、Kindleアプリなどでは表示されません。そのため、あった方が効果的かもしれませんが、必ず必要なものではありません。
Kindle出版で得られる収入の額
電子書籍は一般的に単価が低いため、ベストセラー本になったり、すでに多くのSNSのフォロワーがいるなどしない限り、多額の収入を得ることは難しいという現実があります。
ですが、複数の本を出して売れる本を増やしていったり、ファンを増やしていくことで、少しずつでも収入を増やすことができます。
また、Kindle出版を収入の柱の一つと考え、他の活動と組み合わせることで、全体の収益を増やすことも考えていきましょう。
Kindle出版は無料でも始められる:費用と節約方法
Kindle出版は、すべての作業を自分で行うことで、実質無料で始めることができます。
特に、ChatGPT等の生成AIの登場で、これまで外部に委託する必要のあった作業を自分で行うことが簡単になりつつあります。
一方、より「プロっぽい」本を作成し、存在感を高めたい場合は、外部サービスの利用も検討してみてください。
Kindle出版で費用がかかる作業
- 本の編集・校正
- 本の表紙の作成
- フォーマット調整
- 出版後のマーケティングと広告
これらについては、自分で行ったり、ChatGPT等を活用することで、費用を抑えることができます。得意不得意もあると思いますので、まずは自分でやってみて、苦手な部分は外部に委託するというやり方でも良いでしょう。
出版後の宣伝・プロモーションにはAmazonの以下のサービスも活用できます。
- 無料キャンペーン:期間限定で本を無料に設定しするプロモーションを行うことができます。
- Amazon Advertising(有料): Amazon内で本を宣伝するための広告サービスを利用することができます。申し込みはAmazon.co.jpではなく、Amazon.comで行う必要があります。
KDPで本を出版する手順
KDPで本をアップロードし、出版するための具体的な手順について、画像付きで解説していきます。
KDPアカウントの作成
「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング」にアクセスし、右上の「サインイン」をクリックします。Amazonアカウントがない方は、まずその下の「サインアップ」からAmazonアカウントを作成します。
アカウント情報の設定
初めての場合には、アカウント情報が不完全と表示されるため、「今すぐ更新」から設定を行います。
事業の種類を選び、生年月日を設定し、日本に住んでいる場合は、国で「日本」を選択します。著者情報で、住所も日本語で記載します。
なお、ここでの「著者」とは、本の作者名(ペンネーム)とは異なり、外部に公表されるものではありません。支払いや税申告にも関わることですので、事実を記載するようにしてください。
次に、支払いの受け取り方法の設定で、銀行口座の所在地(国)を選択します。
続いて、口座名義を入力し、口座の種類を選び、口座番号、金融機関コード、支店コードを入力します。
次に、税に関する情報の入力も行います。税務区分を選び、米国市民かの問いで「いいえ」を選択します。
続いて、税務の情報を入力していきます。ここでは、氏名も住所も英数字で入力します。
納税者番号の部分では、「私は米国以外のTINを持っています」のチェックを外し、TINを指定できない理由のうち「私が税金支払い義務のある国では、居住者にTINを発行していません。」を選びます。
ここで「マイナンバーは納税者番号(TIN)にはならないのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
KDPのヘルプのページには、以下のように記載されていますので、基本的には「持っていない」という回答になるかと思います。
日本のマイナンバーは、米国の税務申告には使用できないため、税務情報に関するインタビューでは使用できません。その場合は、税務情報に関するインタビューで TIN を持っていないと回答するか、米国の Individual Tax Identification Number (ITIN) を申請して、その ITIN を入力します。
KDP 税に関する情報の要件
最後に、英語のフォームが出てきますので、下までスクロールし、チェックを入れ、署名します。
出版方法
KDPで出版するには、「本棚」から「電子書籍または有料マンガ」をクリックします。(無料マンガや紙書籍を出版する場合にはそれぞれをクリックしてください。)
本の情報の入力
言語を選択し(日本語の本の場合には「日本語」を選択)、本のタイトル、サブタイトル(オプション)、シリーズ情報・版(オプション)、筆者情報(ペンネーム可)を入力してきます。
続いて、本の紹介文を入力し、「出版に関して必要な権利」をどちらか選びます。また、「主な対象読者」も適宜選択し、「主なマーケットプレイス」で「Amazon.co.jp」を選択します。
続いて、本のカテゴリーを最大3つまで選びます。キーワードを7つ追加し、本の発売オプションを選択し、「保存して続行」で続けます。
ファイルのアップロード
「デジタル著作権管理(DRM)を追加」に適宜チェックを入れ、原稿、本の表紙をそれぞれアップロードします。
AI使用の有無を選択し、必要に応じてプレビューを利用します。
ISBNコードや出版社がなければ空欄のままとし、「保存して続行」をクリックします。
価格設定
「KDPセレクトへの登録(Kindle Unlimited)」「出版地域」を選びます。ロイヤリティプランを35%か70%か選択し、価格を設定します。
入力が終わったら「Kindle本を出版」をクリックで出版完了です。数時間〜数日後に、「Kindle ストアで販売が開始された」というメールが来ると、出版開始となります。
本の登録情報の編集やキャンペーン・広告の実施は「…」から進められます。
確定申告と税金
Kindle出版を通じて収益を得た場合、その収入は税金の対象となります。確定申告が必要な場合には、毎年2月16日から3月15日までに、申告と納税を完了させる必要があります。
- 副業として本の出版をしている場合: 本業以外の収入が20万円以上ある場合、確定申告が必要
- フルタイムで本の出版をしている場合: 出版活動から得た収益すべてが所得となり、確定申告が必要
所得の種類
Kindle出版からの収益は、一般的に「雑所得」として扱われます。しかし、出版活動を事業として行っている場合は「事業所得」となることもあります。所得の種類によって、計算方法や必要な控除が異なるため、自分の状況に合った所得の種類を正しく理解することが重要です。
経費
Kindle出版にかかった経費(編集・校正費用、表紙作成費用、プロモーション費用など)は、所得から差し引くことができます。経費を適切に計上することで、課税所得を減らし、納める税金を軽減できます。
確定申告を通じて適切に税金を納めることで、トラブルを避け、安心して出版活動を続けることができます。不明な点がある場合は、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
この記事では、電子書籍市場の概要、Kindle出版の基本と具体的方法、確定申告等についてご紹介しました。難しいと感じたかもしれませんが、大切なのは「あなたの本を世界に届けたい」という気持ちとその一歩を踏み出す勇気です。
最初はみんな不安だらけです。ですが、一歩踏み出すことで、新しい世界が広がります。
私も最初に本を出版した際には、すべてが手探りでうまくいかないことばかりでした。ですが、一冊の本になって、有名な本と同じようにAmazonに並んでいるのを見ると、「やっぱりやってみてよかった」と感じます。
一冊の本で大きな儲けを期待するのはおすすめしませんが、本の出版には、単なるお金儲け以上の意味があります。
あなたの本が誰かの心に届く瞬間を想像して、今日から始めてみませんか?
自分のペースで、楽しみながら、夢に向かって進んでいきましょう。